3.11後・空気の正体

昭和の預言者(故山本七平氏)の視点をかりながら3.11後の日本社会のおかしな空気の正体を解明したいと考えております。特に菅元首相に対する魔女裁判のごとき我々の異常な憎悪を詳しく検証するつもりです。

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

PageTop

(2)西岡論文の馬鹿さ加減

ちなみに、このような見方は必ずしも的外れなものではない。菅総理のストレステスト実施の発表に対して、一人の民主党員が公然と原発推進の立場から噛みついている。誰あろう、昨年11月5日に死去した元参議院議長の故西岡武氏である。誰にも記憶にあるとおり、彼は中立であるべき参議院議長の立場にありながら、公然と菅総理に退陣要求を突きつけるという憲政史上に例のない行動をとった人物であった。彼は3.11後の菅総理の対応をすべて否定しており、「菅総理のどこが悪いのか?」という記者の質問に対して、なんと「すべてだ」と答えた人物でもある。

当然のことながら西岡氏は菅総理のストレステスト発表に対しても激しい非難を展開した。しかも、その非難は先の磯崎氏のような奥歯にものがはさまったような言い方ではなく、原発推進という立場から菅総理のやり方を正面から徹底的に否定している。それはそれで一貫した立場であるといえるだろう。ただし、このときの故西岡氏の発言は異様な菅降ろしの空気の中での発言であり、仮に今現在の空気の中で同じことをいうと、おそらくマスコミから批判されること必至であろう。以下、西岡氏の遺言ともいえる論文の一部を抜粋しておこう。

2011.7.12 18:25
『国難に直面して、いま、民主党議員は何をなすべきか』
私は、原爆投下による爆風と放射能・放射線が一瞬にして7万余(その中に私の親戚も)の命を奪った郷土長崎の惨状を見、その後、与党の被爆者対策の責任者として取り組んできた唯一人の現職の国会議員です。その私が、原発事故以来、4カ月余の菅首相の姿勢と言動に、強い憤りを覚えています。

日本の原発は、もともと世界最高の技術で造られ、最高の運転と保安技術に支えられていたはずです。ここで、一つ忘れはいけないことは、今回の原発事故に対する菅首相と東電の初期対応に大きな誤りがあったことが、未(いま)だに厳しく検証されていないことです。この検証が、速やかに正確詳細になされることから、日本の新しいエネルギー政策が出発するのです。

この検証がなされないまま、万一、菅首相の「脱原発」のスローガンに基づく菅首相の[現時点の考え]によって、エネルギー政策が進めばどうなるでしょう。確実に、来年の春には、日本に原子力エネルギーは、存在しなくなります。

(中略)

日本では、現在ある「54基」の原子力発電の内、平成23年6月末時点で、「17基」しか稼働していません。定期点検中の原発は、再開困難であり、いま稼働している「17基」が、定期点検に入ったら、前記のように、日本は、全電力の約26%の電力を一気に失うことになります。この一文を書き始めた6月30日、定期点検を終了した九州電力の玄海原発の再開について、佐賀県知事と地元の町長が承認した、とのニュースに接しました。

九州電力の電力需給逼迫(ひっぱく)は、浜岡原発からの60万KW(毎時)を失って以来、厳しいものがありました。ところが、原発再開という難題を海江田経済産業大臣が、地元の説得に成功したかに見えたその時、菅首相は、またもや、突然、「ストレステスト」の必要性を言い出し、海江田大臣の努力は水泡に帰しました。

なぜ、菅首相は、海江田大臣が玄海原発の地元に説得に行く前に、その方針を出さなかったのか、理解不可能です。このように、自然エネルギー推進の道筋と段取りを説明せず、菅首相は、「脱原発」という単純な問題提起で、誤魔化(ごまか)そうとしても、全くの「まやかし」であることは、すぐに証明されることになりました。

菅首相は、「ストレステスト」を言い出したタイミングの悪さに批判が集中するや、なんと、7月8日には、定期点検後の原発再稼働時の場合は、「簡易テスト」という方針を打ち出したのです。この方針の中身には、新規に建設した原発、事故を起こした原発の再稼働時、建設後長期になる原発については、本格的な「ストレステスト」を行うことが書かれています。「本格的なストレステスト」の内容とはなにか、「簡易テスト」とはなんなのか、菅首相がお分かりのはずですから、自ら、国民の皆さんに、ご説明になる責任があります。

6月29日、東京電力の供給量約4900KW(毎時)の93%まで、電力消費量が上昇しました。現時点で、東京電力の最高供給電力量は、約5500KW(毎時)前後と思われます。日本列島は、6月末から、既に、猛暑、酷暑に襲われています。この夏のみならず、日本全国の一年を通じた電力需給を、菅首相はどう考えておられるのか、これも、国民の皆さんに説明される責任があります。

ところが、菅首相は、脱原発を金科玉条の如くスローガンにして、一方で、定期点検が終了した佐賀県玄海原発の再稼働について、県と地元の自治体を説得に行ったのは、海江田経済産業大臣でした。原発エネルギーについて責任を持つ海江田大臣に、十分な相談もなく、停止させた後の対策と他の原発への対応も全くしないで、菅首相が、浜岡電発の停止要請をしたことは、周知の通りです。菅首相が「脱原発」担当で、海江田経済産業大臣が、至難な「休止中の原発の再稼働要請」担当とは、一体如何(いか)なる政府か、と思わない国民はおられないでしょう。
(中略)
原発の定期点検を終了しても再稼働を延期している原発が7基、今後数カ月で定期点検に入る原発は6基という実態を、菅首相が知らない、とは信じ難いのです。こうして、菅首相は、日本全国の電力供給を重大な危機に陥れているのです。ちなみに、福島原発の立地地域について前記の地震研究機関は、「大地震の確率」を「ゼロ%」と、予知していました。

菅首相が、後一年も経ないで訪れる重大な電力危機を放置し、有効な対案を出さず、手をこまねいているのなら、全ての国民の皆さんの前で、テレビで呼びかけてください。「皆さんの生活は、今後長期にわたり昭和45年代(1960年)の水準に戻ります」。「その生活は、電気冷蔵庫も空調機器も電気洗濯機も浴室の給湯器も電子レンジもなく、暖房は火鉢と石油ストーブと湯たんぽです」。「いつになるか不明ですが、自然エネルギーによって全ての国民生活が現時点に戻るまで我慢してください」。と。しかし、それだけでは済まないのです。

日本経済は、菅首相の対案なき「脱原発」の掛け声によって、国民生活とともに、大打撃を受けます。このことは、東日本大震災の復興、新たな建設にも大きな打撃を与えます。根本の原因は、国内の電力不足ですが、輸入エネルギーの価格高騰によって、日本の国際競争力は極端に低下します。有力生産拠点の外国転出によって、日本の産業空洞化が一層急激に進みます。当然、失業者は、さらに増大し、消費は落ち込み、年金、医療、介護などの日本の社会基盤は崩れ「日本経済沈没」の危機は現実のものとなります。

下記HPに全文紹介されています。
http://gra.world.coocan.jp/blog/?p=3094

西岡氏の論文はそれなりによく練られた文章であり、一定の説得性もあることは間違いない。ただし、重大な思い違いをしている部分があるので、指摘しておこう。

日本の原発は、もともと世界最高の技術で造られ、最高の運転と保安技術に支えられていたはずです。

この文章の中の一部は正しいかもしれないが、「最高の保安技術に支えられていたはず」という指摘はすでに福島原発事故でもその誤りが証明済みであり、その後の検証でも日本の原子力安全保安院や原子力安全委員会が本来の役目をまったく果たしていないだけでなく、機能さえしていなかったということが明らかになっている。彼らは安全神話というものを安易に信じて、それを一般国民に喧伝するという役目しか果たしてこなかったのである。でなければ、津波に対する備えがまったくとられていなかったということは説明がつかない。

前にも述べたように、2004年のスマトラ沖大津波では今回の3,11の規模を上回る地震と津波で30万人近い人命が失われていたのである。だとすれば、少なくとも日本各地の原発では同程度の規模の地震と津波に備えた対策がとられていなければならなかったはずだ。しかし、彼らはまったく何の対策も講じていないどころかそのための議論さえしていなかったのである。それは前にも述べたように日本の地震学者が東北沖の震源域ではM8を超えるような巨大地震はありえないと何の根拠もなく決めつけていたからである。

保安院や安全委員会はその地震学者たちの根拠なき予測を安易にも信じて、福島原発は7メートルの堤防で津波予防対策は十分であると信じて疑わなかった。しかも万が一にも津波がその堤防を乗り越えてきたときの備えもまったく講じず、その場合に全電源喪失という事態もありうるという(共産党議員による)警告が一部にあったにもかかわらず、そんなことは起こり得ないと高をくくっていたのである。このような事実があるにもかかわらず、「最高の保安技術に支えられていた」という故西岡氏の認識は、まったくお話にもならない。

しかも、菅総理が言い出したストレステストの導入は福島事故が起こった後、日本よりも前に欧州で決められた安全基準である。保安院や安全委員会が本来の機能を果たしているなら、せめて福島原発で事故が起こった後に深刻に反省し、自ら率先して全原発のストレステストの実施を菅総理の独断専行の前に提言すべきであっただろう。にもかかわらず西岡氏は日本の原発の保安技術は世界最高であり、3,11の事故を深刻化させたのは保安技術の問題ではなく、むしろ菅総理のミスであったといわんとさえしているのである。なんという子供じみた事実誤認であろうか。これでは黒を白、白を黒という犯罪者の自己弁護とまったく同じであろう。

おもうに西岡氏は過去原子力村に深く関わってきた人物なのだろう。その結びつきがどのぐらい深いものであったのかはさておき、彼の論文を読むと、要するに3,11後も旧態依然の安全神話を根本から疑うこともなく、これまでどおり原発推進をしなければ日本経済は沈没してしまうという時代錯誤な危機感だけが横溢しているようである。これが彼の遺書だとしたら、本当に後世に笑い物にされるような馬鹿な論文をあらわしたものだといわざるをえない。(ちなみにこの論文は読売新聞に寄稿され、一部は本紙に紹介されたようである)
関連記事
スポンサーサイト

PageTop

コメント


管理者にだけ表示を許可する
 

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。