3.11後・空気の正体

昭和の預言者(故山本七平氏)の視点をかりながら3.11後の日本社会のおかしな空気の正体を解明したいと考えております。特に菅元首相に対する魔女裁判のごとき我々の異常な憎悪を詳しく検証するつもりです。

繰り返す迫害の構造 「日本人とユダヤ人」より

「われわれは迫害されたがゆえに人類に対して何かの発言権があるとは思ってはならない」。私は絶えず同胞にこのようにいう。だがこの言葉はちょうど日本人に「唯一の原爆の被爆国なるがゆえに世界に向かってなんらかの発言権があると思ってはならない」というのと同じであって、中々受け入れられず、時には強い反発を受ける。もちろん、ユダヤ人に対してこういう権利があるのはユダヤ人だけであり、また同様に、日本人に対して前記の言葉を口にしうる権利があるのは日本人だけであるから、私はその言葉は、口にしようとは思はない。
ただユダヤ人の場合は。確かに唯一の被迫害民族ではない。遠い昔のことはさておき、近々4分の1世紀だけにかぎってみても、インドネシアにおける華僑と、黒いアフリカにおけるアラブ人の迫害がある。インドネシアにおける華僑迫害は日本の新聞に報道されたが、欧米の新聞には余り報道されなかった。日本の新聞記事によると殺された者の数はあるいは20万人とも50万人ともいう。・・・


この文章はイザヤ・ベンダサン著「日本人とユダヤ人」の最後の方で「しのびよる日本人への迫害」という項で書かれている。私がこの本を初めて読んだのは大ベストセラーになった1970年代初頭の頃だ。当時は私自身も参加したことのある全共闘運動が挫折しニヒルな日々を送っていた時期であったと回想するが、その間隙の中でこの本があれよあれよと300万部ものベストセラーになった。謎の人物イザヤ・ベンダサンとは一体何者かという興味もあったが、なによりも新鮮だったのはイデオロギーの粉飾がないうえに、かつて読んだこともない鮮やかな日本人論及び文明批評にもなっているといった感想であった。

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但し、その当時の私はこの本の最後の方でこんな怖ろしい予言めいた項があったとはまったく記憶にもなかった。特に、ここでもふれられているインドネシアで起こっていた虐殺については何一つ知らなかった。新聞やテレビのニュースには毎日接していたはずだが、そのニュースについて私はつい最近にこの「日本人とユダヤ人」を再読するまで、まったく知らなかったのだ。「えっ本当にそんなことがあったの」と思い、すぐにインターネットで調べてみたら、それは事実であるだけではなく、2,3年前に映画にもなっているということを知ってあらためて自分の無知さに驚いた。

ところがこの映画については新聞でもテレビでもあまりとりあげられていないせいなのか一般の話題になることもなく、私のように事実自体を耳にしたこともないという人が多いのではないだろうか?

但し、イザヤ・ベンダサンすなわち山本七平氏も当時、新聞の片隅に書かれていた記事を読んで仕入れた程度の知識しかなく、それは必ずしも正確とはいえないはずだが、戦後のオランダ統治下のインドネシアでその権力を引き継いだスカルノ政権が失脚したあと(60年代中頃)に起こった出来事であるということはきちんと把握していたようである。

大虐殺を実行したのはスカルノ後に権力を掌握した元少将のスハルト大統領であり、彼は共産主義者とその支持者を徹底的に壊滅させるために皆殺し作戦をとっていたのだ。ベンダサンが殺されたのは中国人華僑だったと書いているが、これは必ずしも正確ではなく、殺害の対象とされたのは主にインドネシアの共産主義者とその支持者であり、その一連の虐殺の中で大量の中国人華僑も巻き込まれることになったというのが真相のようである。但し、ベンダサンが指摘するように、インドネシア人にとって商売上手な華僑は日頃からよく思われていなくて、ちょうど欧州のユダヤ人のようにみなされていた可能性もあることは事実だろう。

当時はベトナムやカンボジアで共産主義者による民族独立運動が起こっていた。アメリカはこれを共産主義化のドミノ現象として恐れ、ベトナム戦争に介入していた。当然ながらインドネシアでも共産主義者による独立運動が起こることをアメリカは警戒していたので、反共スハルト政権に対しては大歓迎し、彼らを軍事的にも支援していた。また日本の当時の佐藤政権(安倍総理の大叔父)もスハルト政権を援助していたといわれている。


参考:
9月30日事件 https://ja.wikipedia.org/wiki/9%E6%9C%8830%E6%97%A5%E4%BA%8B%E4%BB%B6
知られていない大虐殺 http://synodos.jp/international/15069

カーター政権になってアメリカが軍事介入から手を引いた70年代にベトナム戦争が終結し、カンボジアやラオスなどが連鎖的に共産主義化されていった。特にカンボジアではポルポトのクメールルージュによる300万人ともいわれる大虐殺があったとされているが、しかしこれは大部分集団移住政策の失敗による飢餓に起因するものであり、虐殺であったとは必ずしもいえない。同時にネットウヨなどが今でもいいふらす中国毛沢東による5000万人規模の虐殺があったというのも、害虫駆除の失敗等によって大飢饉を招き飢えなどで亡くなった犠牲者の総数だといわれているのでこれも虐殺とはいえない。

この項の最後の方で関東大震災最中の朝鮮人虐殺についてもふれられている。

「前に述べた迫害のパターンからすると、少なくとも当時は朝鮮人が迫害されねばならぬ理由は全くないといってよい。当時の日本は実質的には欧米の資本家に支配され、その資本家と日本人大衆の間に朝鮮人が介在して、暴利を独占していたわけではもちろんない。逆であり、その多くはむしろ最下層にあって最低の労働条件で、最低とみなされる労働に従事していたのは事実である。またおそらくは関東大震災という突発的大天災が起こらなければ、あの悲しむべき虐殺事件も起こらなかったであろうことも事実である。うっせきした民衆の不満が天災を契機にして朝鮮人に向かって爆発したわけでもない。ということは、その後、現在に至るまでの半世紀、こういった事件、もしくはそれと同じ性格をもつと思われる事件はなんら発生していないからである。
(中略)
従ってこの迫害は動物学的迫害ともいえるもので、迫害の重要な一面を純粋に表している。従って人類の将来のために、これは非常に貴重な資料である。もちろん私は日本人が動物的だなどという気はない。いずれの迫害にもこの動物的迫害があるが、日本人の場合はこの要素のみだともいいうるので、その他の場合には判別されにくい要素が、はっきりでているからである。
(以下略)


この後も延々と朝鮮人虐殺についてのベンダサンの説明は続くが、要は朝鮮人虐殺とユダヤ人虐殺には共通点もあるが同じではなく、ユダヤ人の虐殺についていうと、むしろ今後は日本人がユダヤ人のように世界的な迫害の対象にならないともかぎらないとベンダサンはみているのである。なぜなら日本人はかつての欧州のユダヤ人と同じように商売で成功し金をしこたま儲けたために、世界の人々から妬まれ迫害される理由が存在するのだというのである。

尚、朝鮮人虐殺については当ブログで「動物的本能としてのジェノサイド 90年前の出来事」と題して書いております。

事実、70年代から80年代にかけて、高度経済成長期に日本は「Japan as No1」ともてはやされ、米国との激しい貿易摩擦でジャパンバッシングが起こったこともある。その後、バブルが崩壊し日本経済が沈んだおかげでアメリカの中でのジャパンバッシングは少なくなった観もあるが、最近では中国との激しい経済市場競争が起こり、これが世界の中で多くの紛争の種をばらまいている。

中国人華僑と同様日本人はかつてエコノミックアニマルと称されたことは世界の人々の記憶に残っている。安倍総理が世界を訪問するたびに数千億もの金をばらまいているのも世界からどうみられているのかということが気になるところである。まだ成り上がりにすぎない模造品作りの名人(=中国)に負けてなるものかというのが日本の経済人の思いであろう。しかし、そのような思いは欧米が日本に対してかつて抱いていた思いと同様なのである。

日本人がユダヤ人や華僑のように海外で迫害されることは今後ないとしても、必ずしも世界が日本びいきになってくれるという保証はどこにもない。成功に対しては必ず反感もあるはずである。

9月25日記 本項未定です
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