3.11後・空気の正体

昭和の預言者(故山本七平氏)の視点をかりながら3.11後の日本社会のおかしな空気の正体を解明したいと考えております。特に菅元首相に対する魔女裁判のごとき我々の異常な憎悪を詳しく検証するつもりです。

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海水注入問題をめぐる安倍晋三ブログの悪質さ

野球というスポーツには誤審がつきものである。ピッチャーが投げるきわどいストライク、ボールの判定から、走者のコンマ1秒のセーフ、アウトの判定、そしてホームランかホームランではないかという微妙な空中での球の動きの判定。それらの判定によって勝敗が左右され、あるいは年間の優勝が決まるという場面もある。だから最近はビデオ判定が多用されるようになってきた。これは野球に限らず世界的な流れである。テニスなどでもライン上の内か外かという判定に頻繁にビデオ判定が用いられるようになってきた。野球に関してはアメリカの大リーグではストライク、ボールの判定以外のすべての判定にビデオ判定が持ち込まれるようになった。その点、日本のプロ野球は意外と古い考え方が支配的で、誤審も野球の一部だという意見も多い。但し、数年前から日本のプロ野球でもホームランか否かという微妙な判定にビデオ判定が持ち込まれるようになった。

ところが、今年の9月12日の阪神広島戦でビデオ判定をめぐって珍事が起こっている。広島の田中選手が打った左中間のホームラン性のあたりが、何かにあたりバウンドしてグランドに戻ってきた。田中選手はすでに3塁まで走っていたが、ホームランではないかと広島のベンチが訴え、審判団が集まってビデオ判定をすることになった。結果はホームランではなく3塁打として判定が下り、その後、田中は本塁に生還できず、試合は2対2のまま引き分け試合になった。しかし放送されていたテレビ中継のスロー再生をよくみると、球は確かに何かにあたってバウンドしてはいるものの、外野フェンス上にかさ上げされた数メートル高の網のてっぺんにホームランの境界を示す黄色のテープが張られているのであるが、球はそのテープを超えて一度外野席側に入っている事を示す確かな証拠が写っていた。それはストップ映像に映った球の外側に外野フェンス上の網目が写っていることから明らかであった。後日判明したのは外野のスタンド側に観客の侵入を防ぐためのワイヤがはられていて、それにあたって跳ね返ったことが分かった。審判は後日、そのビデオ判定が誤審である事を認めたが、もちろん終わった試合を覆すことはできない。結局、広島はこの試合を引き分けたそのわずかの差でもって日本シリーズ出場をかけたクライマックスを戦う機会も失い、シーズンは4位で終わることになった。ちなみにビデオ判定であったにもかかわらず誤審であったというのは史上初めてのケースである。

一昨日、東京地裁で長く係争になっていた菅直人氏が総理時代に安倍晋三氏から重大なデマを流されて名誉を棄損されたという裁判の判定が下されたが、この判決をみているとビデオ判定で誤審をした審判も笑えない判決だなと思った。但し、ある意味では予想された判決でもあるなと思ったが、判決文の一部を読むとありえないような文言に驚愕せざるをえい。

予想通りというのは現役の総理大臣を名誉棄損で訴えた裁判で、現役総理の方に不利な判定が下されるという事は考えにくいからである。裁判官というのは内閣総理大臣に任命された立場であり、会社で言えば裁判官は平社員、総理大臣は総社長ということになる。詳しくいえば総理大臣は最高裁判所の長官を指名し任命する権限をもっている。その最高裁判所が指名した各地方裁判所の裁判官を総理大臣(内閣)が任命するという仕組みになっている。したがってこのような上下関係がはっきりしている以上、地方の裁判官が現役の総理を裁くという事はよほどの事でもないかぎり考えにくい。かつては現役の総理であった田中角栄が自らの手下であるはずの検察にロッキードの汚職容疑で逮捕され、裁判でも有罪が確定した。これは事件があまりにも白黒明白な事件であり重大な事件でもあったからである。

逆にいうと田中角栄が年間数千万円の議員給付で何十~何百億もの価値のある目白御殿を構えるまでにどれほどの裏献金を受け取ってきたかということは誰でも容易に想像できるほどの当り前の事実であったということである。その裏献金の一部がロッキード社社長が自ら会見で明らかにした為に検察も動かざるを得ず、裁判所も有罪判決をださざるをえなかったのである。すなわちこのケースは初めから誰がみても誤審のしようがない完全な黒であり、検察も裁判所もその証拠が一般国民にも明明白白に知られている以上は動かざるを得ない事件であった。だから、この事件を日本の三権分立が生きている証拠だとみるのは早計過ぎる。実際は裁かれるべき総理の事件は他にも無数にあるはずだが、いつの時代も裁判所は自らの社長にあたる現役の総理大臣を裁くことは難しいとみるのが現実であろう。

したがって今回、菅直人元総理が現役の総理である安倍晋三を訴えたケースは、どう考えても菅氏に勝ち目はないと思っていた。一介の地方の裁判所の裁判官が現役の総理を有罪にするほど勇気があり正義感もあるとは到底思えない。ましてや菅元総理は政官財からまるで政界の汚物のようにみなされている人である。特に原発再稼働をこれほどまで困難にした張本人は菅直人であり、彼ほど原発利権に群がる人々から嫌悪されている人物もいないだろう。逆に安倍総理は原発再稼働派の人々によっては、これほど心強い味方もなく、まさに彼らにとっての英雄である。

今回の裁判で唯一期待が持てるとすれば、裁判官がたまたま良心のある人で、しかも原発再稼働に対して批判的な人であれば、菅氏に有利な判決がでたとしてもおかしくはないと思っていた。しかしこの種の期待はやはりせぬほうがよかったというべきか。裁判官にも良心があるとか、裁判官は真実を見極める力を持っているなどと考えるのは理想論でしかなく、結局は自分を愛することしかできないのが人間であり、その点では裁判官といえども人の子なのだ。自らの置かれている立場というものを考えれば、初めから自分が出せる判決は限られていたとみるのが現実だろう。

その点は野球の審判とはまったく違う。野球の審判にもかつては巨人の選手にエコひいきをしているのではないかと疑われる審判もいたりしたが、今ではそれほど巨人が特別な球団でもなくなった。但し、野球に限らず国家同士の競技になるとどうしてもエコひいきによる誤審の問題などがでてくる。サッカーのワールドカップでは審判が慣習に怨まれて殺されるという事件も発生しているが、それほど審判も命がけである。

話が転々としてしまったが、今回の菅直人敗訴の理由を記した東京地裁永谷典雄裁判官の判決文をみて唖然としたのは次のような文言があったからだ。

「記事は事故対応の詳細が判明する前に発信されていた上、菅元首相の資質や政治責任を追及するもので公益性があった」

この判決文は明らかにおかしい。「記事は事故対応の詳細が判明する前に発信されていた」というのは、要するに安倍晋三が自らのブログに発表した記事が事実ではなかったけれども、それは事故対応の詳細が判明する前に発表されたので事実誤認もやむをえなかったと裁判官が認めていることになる。菅氏はそれが事実誤認だったということを指摘しており、そのために名誉を棄損されたと主張しているにもかかわらず、裁判官は事実誤認があったことは認めながらも、それが詳細な事実関係が発表される前に書かれた記事なので致し方なかったとしているように聞こえる。

これに関する事実関係とはどういうものであったのかここで整理しておこう。

2011年3月11日14時46分に東北沖でM9以上の巨大地震が起きた、その後津波が押し寄せて福島原発の地下に置いてあった予備電源が水没し全ての電源が喪失した。この結果、原子炉の冷却水の循環ができなくなり、やむなく消防のポンプ車を使って予備タンクから給水していたが、この予備タンクの水が切れるのも時間の問題ということで、早くから吉田所長は海水注入に切り替えることを考えていた。この話が官邸にも届いて海水注入に切り替えることを了承していた。

但し、海水注入までの猶予が一、二時間あると官邸は聞いて、その間に海水注入による不測の事態が起こらないかどうかについて議論が始まっていた。菅総理は斑目原子力安全委員会委員長に対して「海水注入によって臨界が始まる心配はないか」と質問した。それに対する斑目氏の答えは「ゼロともいい切れない」といういい加減なものであったが、他の安全委員に電話でその確認をしようということで回答待ちになっていた。この間に官邸の議論を聞きつけた東電武黒フェローが吉田所長に対して官邸が議論をしているので海水注入を止めろという命令を発した。

しかしながら吉田所長は自らの判断で海水注入を始めており、これを中断するとより危険な状況になると判断して武黒氏の命令を無視して海水注入を中断せず、そのまま続行していた。但し、この事実が判明するのはかなりのちのことである。5月21日の東電の記者会見では官邸の「再臨界の恐れあり」との意向を汲んで、東電は海水注入を中断していたという事実とは異なる発表をしている。ちなみに翌日の日経新聞には次のように書かれていた。

東京電力は21日の記者会見で、東日本大震災の発生翌日の3月12日に福島第1原子力発電所1号機で進めていた海水の注入を、首相官邸の意向をくんで一時中断したことを明らかにした。官邸側が海水注入による再臨界の危険性を指摘しているとの情報を東電側が聞き、止めたという。細野豪志首相補佐官は記者会見で「官邸は注入の事実を把握しておらず、首相は注入を止めることは指示していない」と述べた。1号機は津波で冷却機能が失われ、核燃料棒の大部分が溶け落ちた炉心溶融(メルトダウン)が起きた。冷却水が中断したのは55分間で、原子炉の冷却が遅れて被害が拡大した可能性もある。東電によると、原子炉への真水注入が12日午後2時53分に停止。午後3時36分に水素爆発が起きた。午後7時4分から海水の注水を始めたが「官邸の方で再臨界の危険性があるような意見があったので、政府の判断を待つ必要があるため、いったん停止した」(東電)という。この情報を福島第1原発の現地に伝え、午後7時25分に注水を停止した。

この発表自体が間違いであったということは、5月26日になって新たに出された東電の発表で「実は海水注入の中断はなかった」という事実が判明したのである。吉田所長が独自の判断で海水注入を中断しなかった事実をこの時になって明らかにした。

但し、この問題は菅総理の進退問題にもなるほどの大問題として国会でも追及されていた。実は海水注入を中断させた犯人は菅総理であったという噂は安倍晋三のブログで発表されたのがその発信源であった。安倍は5月20日のブログに次のように書いていた。

abebrog1.jpg
『菅総理の海水注入指示はでっち上げ』最終変更日時 2011年5月20日福島第一原発問題で菅首相の唯一の英断と言われている「3月12日の海水注入の指示。」が、実は全くのでっち上げである事が明らかになりました。
複数の関係者の証言によると、事実は次の通りです。
12日19時04分に海水注入を開始。
同時に官邸に報告したところ、菅総理が「俺は聞いていない!」と激怒。
官邸から東電への電話で、19時25分海水注入を中断。実務者、識者の説得で20時20分注入再会(注、原文のまま)。
実際は、東電はマニュアル通り淡水が切れた後、海水を注入しようと考えており、実行した。しかし、やっと始まったばかりの海水注入を止めたのは、なんと菅総理その人だったのです。
この事実を糊塗する為最初の注入を『試験注入』として、止めてしまった事をごまかし、そしてなんと海水注入を菅総理の英断とのウソを側近は新聞・テレビにばらまいたのです。これが真実です。
菅総理は間違った判断と嘘について国民に謝罪し直ちに辞任すべきです。


この記事は東電発表の1日前であることに注意してほしい。おそらく東電の誰かから海水注入が官邸の判断で中断していたという事実を聞きつけ、このような内容になったのであろう。

東京地裁の判決文を再度みてみよう。
「記事は事故対応の詳細が判明する前に発信されていた上、菅元首相の資質や政治責任を追及するもので公益性があった」

この判決文が不当であることは明らかだ。「詳細な事実が判明する前に発信」されているので事実誤認があったのはやむをえないということであるとすれば、この裁判官はどうかしている。安倍晋三は明らかに事実誤認をしていたのだ。しかも一つだけではなく複数の事実誤認をしており、その上にこんないい加減な先入観から菅総理の辞任まで求めているのだ。(裁判官は「詳細が判明する前に発表された」としているが、このブログ記事が事実誤認であったということが判明した後もなお安倍晋三は取り消しも修正もせず、裁判に訴えられた後もそのまま放置していた。ブログから消去されたのは今年の6月頃だという)。

事実、この翌日の国会では次のようなやり取りがあった。

以下5月23日の衆院予算員会でのやりとり。

谷垣総裁 3月12日の午後6時に(首相官邸で)何を議論していたのか。

菅総理  再臨界という課題もあったし、議論の中でも出ていた。そういうことも含め、海水注入をするに当たり、どのようにすべきか検討するよう(経済産業省原子力安全・保安院や原子力安全委員会などの)皆さんにお願いすると(いう議論だった)。

谷垣総裁  班目(春樹原子力安全)委員長が再臨界の可能性を指摘したとの報道があるが、進言したのか。

班目氏   多分、首相から「再臨界は気にしなくていいのか」という発言があったので、「再臨界の可能性はゼロではない」と申し上げた。これは確かだ。

谷垣総裁  東京電力は1号機に海水を注入していたが、官邸で再臨界の議論がされているから中断した。

菅総理   少なくとも私や(首相官邸で議論した)メンバーが止めたことは全くない。(海水注入の中断は)私や(枝野幸男)官房長官に報告が上がってなかった。やめろとか言うはずがない。

谷垣総裁  福島原発の視察が(格納容器から放射性物質を含む蒸気を排出する)「ベント」実施の大きな障害となって遅れを招いた。海水注入を政府内の混乱で中断したのは非常に大きなミスだ。


この問題はやがてうやむやになったまま、一気に民主党小沢派との連携プレーで菅総理に対する不信任動議の提出へという流れになってゆく。福島原発事故がおこってからまだ3カ月もたたない中、この先何が起こってもおかしくない状況で、政界はここぞとばかりに総理退陣要求へと突き進んでいくのである。仮に小沢派が自民党と共同で不信任案に相乗りした場合、菅総理は解散権を行使できない状況であった。なぜなら福島だけでなく、津波被害を受けた東北各県で選挙など出来る状況ではなかったからである。そのような戦後最大の国難の中で政治家が政争に明け暮れていたことを我々は覚えておくべきであろう。しかも、この政争の重要な発端になったのが安倍晋三のブログであったということを忘れてはならない。

くどいようだが、もう一度裁判官は判決文をみてみよう。

「記事は事故対応の詳細が判明する前に発信されていた上、菅元首相の資質や政治責任を追及するもので公益性があった」

ここで裁判官の「公益性」というのは、菅元総理の辞任に追い込んだことに公益性があったのだと評価していると受け取れる。つまり、安倍晋三のブログがたとえ事実誤認であり、デマであったとしても、それによって菅元総理を辞任に追い込んだことはよかったのだといっているように聞こえる。このような評価が仮に成り立つとすれば、この裁判官は明らかに全原発を止めて再稼働を困難にした菅元総理の政治が間違っていたという、極めて偏った立場の下に行われた政治的判決であるということになる。

補足1.この永谷典雄という裁判官の履歴を調べてみると驚きももの木だ。この裁判官が東京地裁の総括判事になったのは2014年10月であるという。つまり菅氏が安倍総理を名誉棄損で訴えた話題の裁判が係争中のことである(菅氏の裁判は2013年7月に始まった)。驚くのはそれだけではない。なんと永谷氏は1年半前までは法務省の訴訟企画課長を務めるエリート官僚であったという。しかもまだ驚くのは早い。なんと彼は長い間(10年以上)検事をやっていたらしい。このわずか1年半の不自然な異動をみると、明らかに安倍を護るために法務省から東京高裁(半年間)→東京地裁へと派遣されてきたのだろう。途中にわずか半年の東京高裁をはさんだのは、あまりにもみえみえの異動を避けたのだろう。この異動にもし政権がかかわっているとすれば、ゆゆしきことであり三権分立を基礎とする憲法下であってはならないことだ。これは重大な問題だ。

以下は永谷典雄の経歴(他のHPの引用です)

所属
東京地裁部総括判事
異動履歴
H.26.10.27 ~       東京地裁部総括判事
H.26. 4. 1 ~ H.26.10.26 東京高裁判事
H.15. 4. 1 ~ H.26. 3.31 検事
H.12. 9. 1 ~ H.15. 3.31 東京地裁判事
H. 9. 4. 1 ~ H.12. 8.31 検事
H. 9. 3.28 ~ H. 9. 3.31 東京地裁判事補・東京簡易判事
H. 6. 4. 1 ~ H. 9. 3.27 福島家地裁白河支部判事補・白河簡裁判事
H. 4. 4.11 ~ H. 6. 3.31 新潟地家裁判事補・新潟簡裁判事
H. 3. 4. 1 ~ H. 4. 4.10 新潟地家裁判事補
H. 1. 4.11 ~ H. 3. 3.31 大阪地裁判事補
(第41期)

【人事】法務省(2011年4月1日)平成23年
訟務企画課長、永谷典雄
【人事】法務省(2013年4月1日)平成25年
官房審議官、永谷典雄


12月7日記追記 本項未定です。
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