3.11後・空気の正体

昭和の預言者(故山本七平氏)の視点をかりながら3.11後の日本社会のおかしな空気の正体を解明したいと考えております。特に菅元首相に対する魔女裁判のごとき我々の異常な憎悪を詳しく検証するつもりです。

墓穴を掘る人々 そして「殉愛」騒動??

このところ安倍政権の閣僚と安倍総理自身、そして安倍総理に近いお友達の方々が頼まれもしないのに、次々と墓穴を掘るようなことをされているので、これは何かの兆候でもあろうかと思い、この際、後の世のためにもまとめてみることにした。

先日の国会予算員会で民主党の玉木議員の質問時に答弁席に座っていた安倍さんの口から「日教組はどうするんだよ」というようなヤジがでたのが問題になっていた。このヤジについて、翌日、民主党前原議員から「閣僚席からヤジを飛ばされるということ、これはきわめて品位に欠ける。また(首相)ご自身が、自らの答弁席からヤジを飛ばされることは言語道断だと思います。厳しく反省していただきたい」と安倍総理の反省をもとめたところ、これに対して安倍総理は反省をするどころか次のような弁明をしていた。

「なぜあのとき日教組と言ったかというと、日教組は補助金をもらっていて、そして教育会館というものがあるわけですが、教育会館から献金をもらっている議員が民主党におられて・・・」

そもそも答弁席から総理大臣がヤジを飛ばすこと自体が品位に欠けるということを前原議員は指摘しているにもかかわらず、そのヤジを飛ばしたこと自体を反省するどころか、逆にヤジの正当化をしようとしたのだから、これはまさに安倍総理の幼児的ともいえるほどの自己中心性(つまり反省ができない)を表す見逃せないシーンだなと括目してみていた。

しかし、驚くのはまだ早かった。後日、玉木議員の調査によると、日教組はそもそも補助金をもらっていないし、民主党も教育会館から献金を受けてもいない、というのである。つまり安倍総理は自らのヤジの弁明のために即興で事実無根の嘘をでっちあげたことになる。

普段から安倍総理の国会答弁をみていると、大体はあらかじめ受け取った野党の質問主意書に対して側近たちが書いた原稿にしたがって答えていることが多いので、さすがに答えに窮するという場面はめったにないが、今回は自らが招いたこの突発事に対して頭の回路が壊れたのであろうか、適当に思いついたことを述べてその場を切り抜けようとしたのだとしか考えられない。だとすれば安倍総理もおもわぬ墓穴を掘ってしまったものである。

ただし墓穴を掘ったからといっても決して反省しないところがこの人の図太さであろうか?またまた驚いたことに、翌日、安倍総理は前原氏に対する自らのヤジの釈明の件で不正確であったということを認めたまではよかったが、それに対して「遺憾」という言葉を使い、まるで他人事のような謝罪の仕方をしていた。これでは謝罪になっていないではないかと民主党議員にまた突っ込まれていたが、そのまま答えもせず答弁席でふんぞりかえっていた。もしかすると安倍総理の辞書には「反省」という言葉がないのかもしれない。だとすると、本年の8月15日に出される予定の安倍談話がますます心配になる(ちなみに安倍談話の作成に選ばれた有識者の中に極右の中西輝政という人物があるだけで、初めから村山談話の継承などという気がないのは明白なのだが、これをマスコミが指摘しないのはどうかしている)。

翌日、この問題を早々に決着させたいためなのか、疑惑の主の西村農水大臣が責任を取って辞任表明するという荒業にでた。しかし、その西村農水相の辞任表明の中にも安倍総理と同様まったく反省の言葉はなく、かえって自己正当化をしているとしか思えない発言で罪の上塗りをしており、これまた墓穴を掘っているとしか思えない悪態ぶりであった。さらに同じ補助金と政治資金問題で墓穴を掘る人々が安倍総理の閣僚から次々と現れだした。先の選挙の前に二人の女性閣僚が政治資金問題で閣僚の辞任に追い込まれたのは記憶に新しいが、解散総選挙後に再任されて禊を受けたはずの閣僚がまたまた何人も同種の疑惑を抱えているというのだから、これは笑えない。

実は六年前の安倍第一次内閣の時にも同じような問題を起こした閣僚が何人かいて、民主党の馬淵議員によると、「30年間で計17名の閣僚が政治とカネで辞任されている。そのうち7人、17分の7、実に41%が安倍内閣なんです。異常な数字としか言いようがない。日本の政治史上でも、最も政治とカネにまみれた内閣ですよ」とまで突っ込まれている。そういえばあの「なんとか還元水」の問題で自殺に追い込まれた故松岡農水相の辞任も第一次安倍政権の時だったんだとあらためて思い起こされた。

さらにここへきて安倍総理の最側近で文部科学大臣の下村博文氏までさまざまな疑惑が指摘されており、安倍政権にとってこれ以上の傷口が広がれば、「解散の意味は何だったんだ」というような話にもなり不信任案が突きつけられるという展開も考えられる事態になっている。いずれにしても、これらの不祥事はすべて身から出た錆ともいうべきものであり、自らの日頃の心がけの悪さなどから発覚した問題であろう。

ただし、これらの政治資金にまつわる閣僚の不祥事は国民にとっては「ああ、またか」という程度の関心しかなく、そもそも20年ほど前に企業献金を廃止するために莫大な額(年300億円程度)の税金を拠出した政党助成金制度を決めたにもかかわらず、企業献金がまったくなくならないという日本の政治風土とそのような政治風土を許しているわれわれ国民の民度こそ最大の問題であるといわねばなるまい。これほど金銭感覚が麻痺している政治家を選挙でまいどまいど選んでいる国は他の欧米先進国では考えられないことである。

このように安倍政権の閣僚の不祥事の話題がここ最近の新聞やテレビのニュースをにぎわしているわけであるが、そんなちっぽけな話題よりも安倍政権がふっとんでしまいかねないほどの大きな墓穴掘りの話題が水面下でひたすら進行中である。その墓穴掘りの主はというと、ご存じのとおり安倍総理のお友達で一昨年NHK経営委員にも抜擢されたベストセラー作家百田尚樹氏その人である。伝えられるところでは、この墓穴掘りによって百田氏はNHK経営委員を辞めざるをえなくなったそうであるあたりまえだろう。下手をすると刑事事件に問われかねない捏造だらけのノンフィクション本を出版し、家敷家の親族ばかりか周辺の人々にも多大な迷惑をかけている最中なのである。この事件の全貌があかるみになると、NHK経営委員という役職どころかおそらく彼の作家生命自体がこの世から消滅することになるだろう。そしてこのようないかがわしい人物をもてはやしたマスコミ人や政治家(とりわけ安倍総理)の責任も問われることになるだろうhyakuta.jpg月刊「宝島」3月号


作家百田尚樹氏というと、ほんの数年前にはまったく無名の人であった。これが処女作だったのかどうか知らないが映画にもなった小説「永遠の0」(2006年太田出版)で作家デビューし、後に文庫化され映画との相乗効果もあってか100万部以上の売れ行きを記録したという。その後、2013年「海賊と呼ばれた男」(講談社)で本屋大賞を受賞し、一躍ベストセラー作家としてその名を全国に轟かせることになった。出版された小説はまだわずか数冊ではあるが、ことごとく数十万部以上の華々しい売れ行きとなっており、この彗星のごとく現れた超売れっ子作家の登場がまさに第二次安倍政権の誕生ともリンクしていて、誰が目を付けたのかは知らないが(おそらく渡部昇一氏あたりであろうか)、安倍総理との対談本(「日本よ 世界の真ん中で咲き誇れ」ワック2013.12.26)が出版され、これまた大ベストセラーとなり、第二次安倍政権の華々しい復活を飾るがごとき売れ行きとなった。
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タイトルをみただけでも思わず仰け反らざるをえない・・・

このあとすぐに安倍総理の肝いりでNHKの経営委員に選出され、そしてお友達の籾井会長という前代未聞ともいうべきNHK会長人事への露骨な権力の介入が断行された。しかしながら籾井会長がどういう人物であったかということは、いきなり自らの就任インタビューでボロをだすという、これまた前代未聞の醜態を演じ、この話題はすぐに世界全体で知られることになった。イギリスのBBC放送などがこのNHK新会長の発言を非難報道していたことは記憶に新しい。その一方、百田尚樹氏も数々の放言で国内ばかりか世界中の批判を受けていた。安倍政権がこのような右翼作家とつるんで公営放送を牛耳ろうとしている話題は、いまや全世界で知られる事実となっている。今回、イギリスのウィリアム王子が来日した際にNHKを訪問したことでイギリスのタイムズ誌が批判しているというのも、この安倍人事がいまだに世界中で関心がもたれている証拠なのである(日本人はもうとっくに忘れているのかもしれないが・・・)。

さて百田氏の墓穴掘りの話題に入る前にもう一人、ネット右翼の親玉のような人物の墓穴掘りについても触れておこう。ご存じ田母神俊雄氏である。元自衛隊航空幕僚長という立場にありながら民間の論文コンテストに「日本は侵略国家であったのか」というタイトルの論文を応募して最優秀賞を受賞したが、日本政府の歴史認識とは違うという理由で幕僚長を解任され野に下ったいわくつきの人物である。ちなみに秦郁彦氏によると「論文は事実誤認だらけだ。通常の懸賞論文コンテストなら、選外佳作にもならない内容だ」と酷評されている(「陰謀論」新潮新書)。この在野に下った人物が読売テレビの「たかじんのそこまで言って委員会」などでもてはやされ、本人も評論家面してあれこれと反自虐史観の持論を展開させてもらったものだから、有頂天になったのか、東京都知事選に出馬して、これからは思想的に近い(?)安倍総理と二人三脚でやりたいというような野望をのぞかせていた。その知事選挙に田母神氏の応援にかけつけたのが、類は友を呼ぶという百田尚樹氏である。

この田母神氏も百田氏と同じくツイッターが大好きな短文名人らしいが、いかんせん自分のいいたいことを言えば言うほどそれが墓穴になってしまうという残念な人たちでもある。時々、田母神氏のツイートだとすぐわかる写真入りアイコンのついた彼のつぶやきをみることがあるが、まいどまいど安倍総理を擁護する言葉ばかりで、安倍さんにとってもこれは迷惑なことではないかと思うほどだ。けれども今回ばかりはさすがにあきれてものもいえない。田母神氏は以前からISISに人質にされた湯川さんと知り合いではないかともされていたが(その証拠に二人で撮った写真もある)、こともあろうにその湯川さんを救いだそうとしてシリアに入ったジャーナリストの後藤健二さんを自らのツイッターで在日ではないかという誹謗中傷を流していたのである。この田母神氏のツィートについては、前にも紹介したとおりであるが、この心ない一言によって彼もまた自らの墓を掘ってしまったというべきだろう。この発言については、さすがに日頃は在日非難を繰り返しているネットウヨからも擁護する投稿もほとんどみられない。それはそうだろう。後藤さんを在日呼ばわりして日本人と切り離そうとするのは(つまりそうすることで日本人は彼を救う義務はないというような暗示をしているのだ)、仮にそれが事実であったとしても、ネットウヨたちにとっても違和感を覚えざるを得ないほど、このうえなく卑怯な行為と映らざるをえない。

さて今回の連鎖的(?)墓穴掘りの決定版ともいうべき百田尚樹氏の話題に戻ろう。ほんの数日前に宝島社から「百田尚樹『殉愛』の真実」という本がでた。でるやいなやアマゾンのベストセラートップという大変な話題性をもった本である。「百田尚樹」という名前がついているだけで、ほとんどの本がベストセラーになる異様な時代だから、この本もまた商魂たくましい出版社が百田尚樹の話題性に乗って出したのではないかと見る向きがあるかもしれないが、これまでのところその反響はすこぶるいいらしい。ちなみにアマゾンの読者のレビューではほとんどが★5つというので、びっくりさせられる。ことわっておくがこの本は百田尚樹が書いたものではなく、逆に百田尚樹の本をこれでもかというほどこきおろすのが目的といってもよいような本である。そんな読者が何万、何十万もいるのかというと、これまた驚きであるが、アマゾンのレビューなどをみると以前は百田尚樹氏のファンであったが、「目が覚めた」という人が多く、アンチ百田尚樹だけではなく、かつての百田尚樹の支持者からも評価されているというのは、きわめて異例の現象であろう。
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面白いのは、そもそもこの本のネタにされている、これまた35万部のベストセラーになった百田尚樹著「殉愛」(幻冬舎)のアマゾンレビューをみると、なんともすごいことになっている。1000件以上もの読者レビューが投稿されており、そのうちの80%すなわち800件以上が★一つという酷評なのである。おそらくこれほど酷い評価はアマゾン始まって以来の出来事であろう。かといって、これは誰かの指示でアンチ百田(または反安倍?)グループが組織的に書きこんだ結果だとも思えない。むしろ先の読者のように、百田氏に対するあまりの失望の落差がこのような結果を招いたのではないかと素直に思える。興味のある方はぜひ「殉愛」(+「百田尚樹 殉愛の真実」)のアマゾンレビューをみていただきたい。

早速、私もこの本を手に入れ、昨晩読み終わったところであるが、確かにこれは読みごたえのある本である(ただし読んだのは「百田尚樹『殉愛』の真実」でネタ本の「殉愛」は読んでいない)。それは決して単に話題性というだけでもない。そして日頃から百田氏を妬んだり憎んだりしている人に溜飲を下げさせてくれるというものだけでもない。もちろんそういった要素もあるが、もっと凄いのはこの本によって百田氏のみならず、出版業界やマスコミ社会のどす黒さがみえてくるというところである。その裏社会で情報を操るテレビや新聞、出版社などがいかなる動機でうごめいているのかということがよくわかる。そしてその先には権力者による情報操作があるのだということを知ると、これは一作家の告発本であるというよりも、むしろ日本社会の腐敗の根深さを鋭く指摘した稀に見る「憂国の書」でもあるといえるのではないか

私はネットやごく一部の週刊誌で巷間ささやかれている、なんとなく醜聞らしき『殉愛』騒動については、多少の興味を持っていた。しかし、まさかここまでのものだとはまったく想像もしていなかった。もしかするとこれは単なる醜聞を通り越して、刑事事件に発展する可能性さえ秘めた前代未聞の詐欺事件である。しかし、この種の話題には必ず集中報道するはずのテレビのワイドショーや週刊誌もほとんど沈黙を守っているのは異様といってもよいだろう。なぜなのか?そこにはあまりにも深い闇があり、報道をする側がこの醜聞の報道に躊躇せざるを得ない複雑な事情と背景がある。しかも、これは単なる醜聞ではなく、安倍政権の根本をも揺るがすほどの政治的爆弾にもなりうる問題であるから、特にテレビ局はその扱いに困っているということは想像ができる。しかし、まいど政府寄りの週刊文春や週刊新潮にでないというのは分かるが、なぜ反安倍を鮮明にしている週刊現代や週刊ポストには書かれないのであろうか?実は週刊現代というのは百田尚樹氏のベストセラー本を何冊か世に出した講談社なので、この話題には封をせざるをえないというお家の事情があるらしい(なんと同じ講談社のFRYDAYでは故たかじん氏とさくら氏の仲の良さをスクープしたかのようなヤラセ記事もだしている!)。同じく週刊ポストも今のところ百田氏の著作の出版計画があるらしく、上からの指示で記事にできないのであろうと憶測されている。大手の新聞社の場合は朝日や毎日がこの話題をとりあげてもよさそうなものだが、これからいくつかの裁判が予定されているので、早とちりだけは禁物ということで、今のところは様子見ということになるのだろう。

というわけで、今のところこの話題を部分的に報じているのは週刊朝日と週刊毎日にかぎられているらしいが、出版社の中ではこの醜聞をタブーにすることは許されないという月刊宝島がこのところ大特集を組んでいる。で、その宝島社から今回、上記の書「百田尚樹『殉愛』の真実」が出版された。この本の共同著者として名を連ねている人の中に故たかじん氏の弟さんがいる。本の中では他に故たかじん氏の長女をはじめとする親族一同の証言があり、また『殉愛』の主人公として百田尚樹氏に絶賛されているさくらという名の30代で離婚歴3度女性の異常な素顔を知る元夫の米国人の証言などもある。

しかし、なんといっても衝撃的なのは故たかじん氏の遺書を捏造してまで遺産を独り占めにしようとした数々の証拠があるということである。それらの証拠が物語っているのはほとんど結婚詐欺師と断言してもよいような彼女の異形の正体であるこの1冊の本を読んだだけで、果たしてここまで断言できるのかどうかということは躊躇すべきかもしれないが、私がこの本を最後まで読んだ限り、そして宝島社の取材班を信用する限り、そのように断言してもよいと思っている(事実、宝島取材班はそう断言している)。だとすると、。これは一つのおぞましい犯罪であり事件である。しかもこの犯罪を逆に覆い隠し一つの美しい物語に変えて彼女の詐欺に加担しようとしたのは安倍総理のお友達でありNHKの経営委員でもあった百田尚樹氏である。百田氏は依然として彼女を信じているのかもしれないが、「読者にはにわかに信じられないかもしれないが、この 物語はすべて真実であるとまで冒頭で書きながら、彼女の過去の離婚歴についてほとんど知らなかったことや、遺言書の捏造疑惑についても反論できないことを認めざるを得ないとすれば、百田氏のその後の言動はあまりにも無責任であるといわざるをえない。

いずれにしても今後いくつかの訴訟で事実が明らかになってくるものと思うが、その前に宝島社がいうとおり、これを刑事事件として警察が捜査に乗り出す可能性もありうる話である。とにかくこの本を一人でも多くの方が読んでみて、この一連の騒動が問いかける問題の醜悪さとその大きさを想像してみてほしい。

最後に一言つけくわえると、この騒動がここまで大きくなったのはネット民(ネットウヨクではない)の良識が世の中を動かす大きな力になったからである。この力はチュニジアのジャスミン革命や香港の雨傘革命を起こした力をも想起させる。もしかするとこの騒動は大手の商業マスコミや商業出版社がネット民に敗北した事件として永遠に記憶されるのかもしれない。

本稿未定です。(3月7日)
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